第15章 箱庭に流れる音色
いつもならば、なかなか笑いが止まらない天元も、嫁たちの身の危険が差し迫った今日に限ってはすぐに笑いを抑え、真剣な眼差しを2人に向ける。
「煉獄にはさっき言ったが、店に潜入していた俺の嫁たちからの連絡が途絶えた。悪ぃが手を貸してくれ。姫さんが男に襲われねぇように最大限の配慮はする」
柱から直々の依頼となれば、それ相応の理由がなければ断れない。
杏寿郎としても任務の依頼が正式に持ち込まれた際には、更紗を送り出そうとしていたので任務に赴かせることに対して異議を申し立てるつもりは毛頭なかった。
だが、今は初めに依頼があった時と事情が違う。
「男の件に関しては自分で対処出来るよう言い聞かせ、体術も仕込んだので気にする必要はない。だが、潜入が必要な店は3つあるのだろう?そこをどうするか考えはあるのか?」
「お、おう……なら姫さんの問題は解決したな。あとの問題は、2日後にお前の継子3人を迎えに戻る。つまり、姫さんと今日の夕刻から2日間張り込んで、各店の情報を新たに仕入れた後1度こっちに戻って来る。姫さんは花街で顔を知られてねぇから、街を歩いてる奴に聞き込みしても怪しまれねぇし、何かしら新しい情報を掴めるはずだ」