第14章 研究と緊急招集
そんな2人に対して、後押しの言葉をかけてくれる人は今はいない。
ここに天元がいれば……いや、天元も止めている可能性が高い。
とにかく今は孤立無援の更紗だ。
この状況を自分で突破しなくてはいけない。
「嘘ではありません。杏寿郎君は見たと思いますが、私の目から血が出たのは初めの1回のみです。あの時に身体への負荷はかけられました。その後は体温と心拍数の上昇、あとは瞳の色の変化だけでした。あの時のような興奮状態は難しいですが、どうにかしてみせます!」
今の更紗が伝えられる精一杯の言葉だ。
これ以上続ければただの駄々っ子のようになってしまう。
これ以上言葉のない更紗を不安に走らせるため息が杏寿郎から漏れ出た。
そのため息で一気に表情を曇らせる更紗に、杏寿郎は眉を下げた笑みを向ける。
「…… 更紗、君が逆の立場なら俺を止めるだろう?俺は今そういう気持ちだ。だが、俺が更紗の立場ならば同じように訴え、是が非でも試させて欲しいと願う。胡蝶もそうではないか?」
「それは……そうですが。立場が違います。私たちは柱で後輩たちを導くものです。一般の剣士である更紗ちゃんがそこまで命を張る必要性が感じられません」