第14章 研究と緊急招集
『類まれなる力によって、杏寿郎が任務先で保護するまで多くの人に利用されていた』
この一言であの時は質問する事すら憚られ、何も聞けずじまいだった。
今も聞きにくいことに代わりはないが、こうして笑顔を他人に向け、更にいつも前向きで力強く、柱の皆からの信頼も厚い杏寿郎に大切にされている少女に興味が湧いた。
「煉獄に保護されるまで利用されていたと聞いたが、それと関係があるのか?」
「はい。杏寿郎君に助け出していただくまでの11年間、ある屋敷で監禁され、日々怪我人、病人の治癒を行っていました。今にして思えば、食事くらいまともに与えてくださっても良かったのにと思いますね!」
サラサラと言葉に詰まることなく……そして冗談ぽく自分の壮絶な半生を語る更紗に度肝を抜かれると同時に、自分の過去を重ね合わせ胸がチクリと痛んだ。
「そうだったのか……少し俺と似ていて驚いた」
似ていてと言われ、更紗は悲しげに瞳を揺らして小芭内を見つめる。
「伊黒様……」
「俺は月神とは逆だったがな。俺の一族が奉っていた蛇型の鬼への供物とするため、食べきれん量の食事が座敷牢に運ばれていた」
そう言って小芭内は顔に巻かれた、更紗にとって恐怖の対象とはなり得ない包帯をゆっくりと外していった。