第14章 研究と緊急招集
それを聞いているのか聞いていないのか、更紗は不躾だとは理解しつつも怪我をしている場所、腕を凝視している。
「あの、ご迷惑でなければ治させていただけませんか?私の力、有り余っておりまして……」
成人男性としては小柄な部類に入る小芭内であるが、それよりも小さな更紗は下から伺うように真剣な眼差しで見上げ答えを待っていた。
「有り余ってる……のか?無限ではないと聞いていたはずだが」
「無限ではありませんが、使わない期間が長過ぎると体内に蓄積して悪さをするのです。ですので、ぜひ伊黒様のお力にならせてくださいませ!」
今まで3度、小芭内は更紗と顔を合わせていたが、こうして面と向かって2人で話すことは初めてなので、予想以上の推しの強さに戸惑ってしまっている。
「俺は構わないが……」
戸惑っていることには気付かず、更紗は顔色をパッと明るくして小芭内の傷付いた腕をそっと持ち上げた。
「ありがとうございます!すぐに終わりますので……あちらに腰掛けましょう。柱の方を立たせたままという訳にはまいりません」
更紗に導かれるまま、小芭内は庭に面した蝶屋敷の縁側へと腰掛け、目の前にしゃがみこんで治癒を開始する更紗を物珍しい生き物を見るような目で眺めている。