第14章 研究と緊急招集
その頃、更紗は随分軽くなったものの咳によって目を覚ましてしまっていた。
「ケホッケホッ……ここは……そっか、私、杏寿郎君と天元君に蝶屋敷に運んでもらったのでした。もう杏寿郎君は帰っちゃったかな?」
更紗が眠りに入る時は意識も絶え絶えだったので気付かなかったが、どうやらしのぶの計らいで一人部屋を与えてもらっていたようだ。
暗い部屋は静まり返っており、誰の気配もない。
「病気の時は気も落ちると聞いたことがあるけど……本当だったんだ……少し寂しい」
口調もいつもと違うところをみると、更紗の中である一定の感情が許容範囲を超えかけ、処理が追いついていないのだろう。
あの場にいた全員に心配をかけたことや杏寿郎と天元に手間を取らせてしまった事への罪悪感や、しのぶに迷惑をかけてしまった罪悪感…… 更紗の中では罪悪感がひしめいており、瞳に涙の膜がかかってしまった。
「……泣いちゃ駄目。泣く元気があるなら、早く良くなって皆さんに恩返ししなくては!」
更紗はベッド脇に備え付けられている小さな棚の上に置かれた水差しを手に取り、湯呑みに水を注ぎチビチビと喉へと流し込む。
そんなところへ、突如扉が静かに開かれ人が入ってきた。
「更紗?起きてるのか?」