第3章 出会い
人の体はこんなに汗をかいても干からびないものなのかと感心しながら更紗は着替えを終え、杏寿郎の待つ居間の隣りの部屋へ足を運ぶ。
そこには千寿郎の姿はなく、杏寿郎がゆったりと着流し姿で座っているだけであった。
「千寿郎は先に終わらせた。昼餉の続きを作るんだと機嫌よく出ていったぞ」
「え?!そうなのですか?!」
その言葉に更紗は驚き、手当てを先にしてもらうか台所に向かうか迷って、その場で体をあっちこっちに向けている。
「まるで迷い込んで来た猫みたいだな!焦らなくていい、千寿郎が昼餉は自分に任せて、ゆっくり手当てしてあげてくださいと嬉しそうに出ていったからな」
なぜ千寿郎がそうしてくれたのから分からず戸惑っていると、取り敢えず座りなさいと畳をポンポンと杏寿郎が叩く。
それに従い杏寿郎の前に腰を下ろすも、落ち着かずソワソワしている。
更紗のそんな様子に笑みを浮かべて、安心させるかのように説明した。
「千寿郎は更紗の掌を見たんだろう。女子の身でありながら、掌を血まみれにしてまで俺の鍛錬に耐えきった」
更紗としては当たり前の事なので、その説明だけでは不足しているようで首を傾げる。