第3章 出会い
杏寿郎の言葉に2人して背筋をピンと伸ばした。
「「はい!師範!鍛錬ありがとうございました!」」
どうすればこうも2人の声と動きが合致するのか分からず杏寿郎は吹き出しそうになるが、弟子として師範に礼を述べているのだ、それを笑う事なんて出来る訳もなく必死に堪える。
「うむ!では解散!」
そうして2人はきちんと杏寿郎に頭を下げて道場を出ていくが初めの元気はどこへやら……今はフラフラとおぼつかない足で庭を歩いていく。
しかし、薬缶、湯呑み、お盆はしっかり持って。
きちんと最後まで気を抜かず鍛錬を終えた2人を見送り、杏寿郎は2人の使った木刀の手入れをする。
千寿郎の方は微かに血が滲んでいる程度だが、更紗の方は塗りたくったと言っても過言ではないほどだ。
木刀が最低限の傷みで済むよう、新しい手拭いでしっかり拭き取り元の場所に戻す。
「それにしてもよく耐えたな。音を上げるならば剣士になる事を諦めろと言おうと思っていたが……それ程までに強い意志だったという事か。ふむ!鍛え甲斐がある!」
今日の鍛錬が楽だったと更紗が感じる日はすぐそこに迫っている。