第3章 出会い
「でも、それは私が杏寿郎さんにお願いした事なので、当然だと思うのですけれど……」
自分の今まで見たことのないボロボロの手を見て呟く。
ボロボロだが、自分の意志でやり遂げた成果だと思えば嬉しく思える傷にうつる。
「そうだ。だが、千寿郎は鬼殺隊の剣士で大の男であっても俺の鍛錬に音を上げて去っていく者を山ほど見ているのだ」
「そう……なのですか?せっかく柱である杏寿郎さんに教えて貰えるのにですか?」
苦笑いをしながら頷き、塗り薬を更紗の掌に塗ってやりながら答える。
「どの柱でも同じようなものだと聞く。俺達、柱は一般の剣士が音を上げるほどの鍛錬を行い柱となった。それを理解出来ない剣士は意外に多く、こんなはずでは無かったと早々に去っていくものだ」
言葉を続ける間も杏寿郎の手が止まることはなく、あっと言う間に更紗の手は綺麗に包帯まで巻き終わっていた。
その様子を見て、怪我の手当に慣れているという事は自分の手当も数え切れないほどしていると言うことだ。
柱になるとはこういう事なのだと実感する。
「寂しくはないですか?その……去っていかれる時……」
ほんの少しだが、杏寿郎の顔が寂しそうに更紗にはうつったのだ。