第3章 出会い
「杏寿郎さんは夕刻からの任務の為に体を休めてください!」
「そうです!昼餉もあと少しで出来るので、それくらい訳ないです!」
2人の必死な表情に目を丸くするも、頑張ろうとしてる2人を遮るのも野暮だと思いそれ以上食い下がるのをやめた。
「では頼む!だが、更紗。君も千寿郎も君の力で掌の豆を治す事はいけないと分かっているか?」
千寿郎はなんの事だか分からず、目を瞬かせているが、更紗は顔を真っ青にしてガクガク震えている。
「千寿郎、またこの事は後日話してやる!そして更紗。君は剣士になる為にここへ来た。君の力で治してしまっては意味が無いだろう?木刀よりも重い刀を持ち、戦う度に手を血まみれにするつもりか?」
なるほど、と更紗は納得した。
つまり更紗の力で掌を治せば、元通り女性らしいサラサラに戻る。
だが、これから刀を握る事を生業とするのだからサラサラな掌ではいけないのだ。
何度も木刀や刀を握り、豆を作り潰し皮が厚くなり、ようやく刀を振るい続けても皮が破れなくなるのだ。
「居間の隣りの部屋に塗り薬と包帯がある。今日くらいは俺が手当してやる!2人とも先に汗を拭って着替えて来る事!」