第13章 新居と継子たち
杏寿郎たちが風呂場へ向かった頃、更紗は離れの居間にちょこんと置かれた禰豆子専用木箱を視界に入れていた。
どうやらまだ木箱から出ていないらしく、禰豆子の姿は見当たらない。
(間に合ってよかったです!1人にしなくてすみました!……杏寿郎君たちもお風呂に入られてますし、私も禰豆子さんが出てこられたら一緒にお風呂に入らせてもらいましょう!さっそく準備をしなくては!)
思い立ったらすぐ行動、更紗はいそいそと最新の設備が整った風呂場へと移動し、カランから湯を出して浴槽を充たす。
だが手拭いや浴衣がない事に気付き慌てて母屋へ予備の物を取りに行って、離れに戻ると再びゴソゴソと準備を進めていく。
そんな準備も一段落し、木箱の近くに腰を下ろしたところで中から蓋がゆっくりと開かれた。
よく眠ったからか大きな瞳はパッチリと開いており、見知らぬ場所に警戒しているのかキョロキョロしている。
こうして警戒心を剥き出しにしていたにもかかわらず更紗の姿を見つけると小さな体で勢い良く飛びついて行った。
「わぁ!可愛いです!禰豆子さん、おはようございます。ご気分は悪くないですか?」
禰豆子は更紗の体にギュウッとしがみつきながら、何度も頷き頬を擦り寄せる。
その姿はどう見ても人間の幼子だ。