第3章 出会い
更紗は杏寿郎のお下がりの、千寿郎は自分の道着を着て懸命に木刀を振っている。
そこにはいつもの杏寿郎の姿はなく、鬼師範の顔を出している。
「千寿郎、そんなに急いで振る必要はない!焦らずしっかり真っ直ぐに振り下ろせ!」
「はい!」
「更紗!脇が開いているぞ!しっかり閉めて背筋を伸ばせ!」
「は、はい!」
「2人とも腹筋用意!」
「「はいー!」」
1人で二人を見ているのに、的確に乱れを指摘している。
少しでも刀身が乱れようものなら、木刀を置いて腹筋、腕立て50回ずつさせられる。
更紗にとっては一日繰り上がった初鍛錬であってもそんな事は考慮されない。
本人は気付いていないが、千寿郎に比べると更紗はまだマシな方だ。
杏寿郎の思った通り、更紗の体内の細胞全てが瞬時に回復しているからだ。
回復するということは、回復した細胞がより負荷に耐えようと強く細胞を上塗りすると言うこと。
本人のまかり知らぬ所で、才能が開花されている。
(これが天賦の才というのだろうな、ふむ……少し妬けるな)
2人がヒィヒィ言いながら必死に腹筋に勤しむ中、杏寿郎は休むことなく素振りをして自分の鍛錬も怠らない。