第3章 出会い
2人の言葉に後押しされ、更紗は決心したように表情を引き締めた。
「杏寿郎さん、千寿郎さん、よろしくお願いします!」
「うむ!では2人とも着替えて来い!昼餉までみっちり鍛えてやる!」
「「はい!!」」
2人はそう言って仲良く玄関まで走り去っていく。
杏寿郎はそんな背中を見送ってからふと足下を見ると、薬缶と湯呑みが3つ盆に乗せられて置かれていた。
薬缶を触ると程よく冷えており、千寿郎が自分の為に冷やしておいてくれたのだと理解した。
「相変わらず気の利く弟だ!更紗も千寿郎と触れ合い一日で随分笑顔が増えていいことずくめだ!」
道場の隅へ置いていた手拭いで顔と首の汗を拭うと、笑顔で薬缶から茶を湯呑みに注ぎ一気に飲み干す。
汗をかき乾いた喉が心地よく潤っていく。
「甘露寺が手を離れ、千寿郎も寂しかったのだろうな!更紗が来て一気に元気になった!うむ!鍛錬にも気合いが入るというものだ!いつも以上に張り切って鍛えてやらねばな!」
更紗は知らなかったのだ。なぜ柱と言う教えを乞うのに最も適した人材の元に弟子や継子がいないのか。
しのぶが杏寿郎の鍛錬に耐えうる忍耐力と体力があるならば……
と言ったかを。
柱の鍛錬は想像を絶する厳しいものだと言う事を今はまだ何も知らない。