第13章 新居と継子たち
「はい!煉獄さん、ありがとうございます。あの、俺も更紗に相手してもらってもいいですか?」
「え?!お前らに疲労って言葉はないの?!えぇ……ん?でも更紗ちゃんと追いかけっこ……!やります!俺もやりたいです!」
動機はどうあれ、鍛錬に繋がる追いかけっこに全員が乗ってきてしまった。
杏寿郎は更紗に視線を送って可能か問うと、少し自信なさげだが頷き了承の意を示し返してきた。
「構わないとのことだ!さぁ、時間は待ってくれんぞ!荷物の整理をして、全員しっかり柔軟を終わらせてから道場に集合!あ、箪笥も忘れず持って行くように!」
杏寿郎の言葉を合図に、全員が苦い表情で重い箪笥を持ち上げて居間から退散していった。
その後ろ姿を見送り杏寿郎が更紗に向き直った瞬間、胸元が温かな衝撃に見舞われた。
更紗が珍しく自分から杏寿郎の胸に飛び込んでいったのだ。
「どうした?何かあったのか?」
「私、怖かったのです。猗窩座が現れた時、杏寿郎君の眼前に拳が突き付けられた瞬間を目にした時、こうして杏寿郎君の温もりを一生感じられなくなるかもしれないって……生きていてくださって……ありがとうございます」