第12章 夢と現実 弐
「竈門少年はあの妹1人を残して家族を鬼に殺されたらしい。鬼殺隊に属する者はそう言った事情を抱えている事が多いが……何度聞いても痛ましくいたたまれなくなるな。少しでも我が家で傷が癒えるといいのだが」
「そうだったのですね。だからあれほどまでに禰豆子さんの事を……でも、きっと大丈夫ですよ。心の傷は時間と温かな人との関係が徐々に癒してくれます。私がそうでしたから」
更紗は体温の戻った温もりのある手で杏寿郎の頬に触れ、赤みの残る顔に笑みを浮かべた。
それに応えるように杏寿郎も笑みを浮かべ、頬に当てられた手に自らの手を重ね合わせる。
「そうだな、俺たち家族の心が君に癒されたように、あの少年たちの傷を俺が癒してやれたらと思う」
「私はただのきっかけに過ぎません。杏寿郎君はそのままで大丈夫ですよ。杏寿郎君の飾らない温かさや優しさ、真っ直ぐな力強さにすでに彼らは惹かれています」
互いにニコニコと見つめ合っていると、炭治郎の控え目な声が2人の耳に入ってきた。
「あのぉ……すみません。これからどうすればいいですか?」
炭治郎の最もな質問と、この状況を見られてしまった恥ずかしさから顔を真っ赤にして俯いてしまった更紗の代わりに、恥ずかしげもなく杏寿郎が溌剌と答えた。