第12章 夢と現実 弐
「ふむ、まずは近くの藤の花の家紋の家で休息を取り、その後は念のため蝶屋敷で怪我の具合を胡蝶に診断してもらう。特に竈門少年と更紗は重傷だったのでよく診てもらうように。後のことは隠の方に……」
「杏寿郎君、1つお忘れですよ。結核を患った方の治癒をまだしておりません」
「あぁ、そうだったな……と俺が言うと思ったのならば驚きだが」
本人はいたって本気だ。
杏寿郎には存分に驚いてもらうしかない。
「私の力はまだ有り余っています!ここで治癒しなければもう再び会うことも出来ませんので、どうかご本人が望んでくださるなら治して差し上げたいのです」
「そもそも病気を治せるのか?病気の治癒をしたことが無いのであれば、今の状況で許可は出来ん」
「あります!結核もあの屋敷で何人も治癒をして完治させてきました!」
柱と継子の押し問答を炭治郎一行は冷や汗をかきながら見守っていたが、最終的に杏寿郎が折れたことには驚きを隠せず、ひっそりと更紗の杏寿郎への影響力の大きさを思い知った。
そうして結核の少年をこっそり完治させ、杏寿郎と更紗は乗客乗員、鬼殺隊士、1人も欠けさせることなく、上弦ノ参である猗窩座から守りきり帰路に着いた。