第12章 夢と現実 弐
「杏寿郎君の責任ではなく私が隙を見せたから、猗窩座に投げ飛ばされて逃がしてしまったんです。後悔しても遅いですが……体の方は体温は下がってますが、大丈夫です。肩も肋骨もほぼ完治に近い状態ですし、なぜか失血による目眩や眠気も治まりつつあります」
確かに体温は低いが、意識ははっきりしており言葉も流暢に話せている。
青白かった頬にも赤みが差したように見えた。
それでも杏寿郎は心配が尽きないのか、そのままの格好で体を摩ってやっている。
「それならばいいのだが……以前にも言ったが君の力は特異なものなので、あまり無茶をしてはいけない。あと上弦の鬼に関しても説明済みだが、奴らの力量は柱3人分と言われている。それを俺と柱でない……ましてや甲でもない更紗と闘い、生き残れたことが奇跡に近い。君はよくやった、誇れ!」
更紗を胸元から少し離し、溌剌とした笑顔を向ける。
まだ後悔などの感情が更紗から全て消えたわけではない。
しかし柱に誇れと言われ更紗は胸の中が温かくなった……のだが、なぜか驚いた表情に変化していく杏寿郎に全ての気を持っていかれてしまった。