第12章 夢と現実 弐
「危険ってどういう事ですか?!よく分からないけど止めてくれ!更紗が無理をする必要はないんだ!」
そう言っている間に、炎のような粒子は3人の体を包み込み傷を癒した…… 更紗の傷を残して。
2人の傷が癒えたことを確認した更紗は力を内へとおさめ、フラフラの体でベルトに縫い付けられている鞄に手を伸ばして……諦めたように杏寿郎の胸に体を預けた。
しのぶから渡されていた造血薬の入った小瓶が全て割れていたのだ。
「自分で吹き飛んで瓶を割っていたら世話がないですね」
笑っているがおそらく笑っていられる状況ではない。
以前に杏寿郎の小さな傷と実弥の傷を治しただけで意識を失いかけたのだ。
今回はその時の比ではない傷や損傷を治した。
しかも更紗自身数カ所骨折しており、更に心身共に疲弊している状態でだ。
それでも強行して治癒を行ったということは、それほど猗窩座の件で思い詰めていたのだろう。
それを杏寿郎も分かってしまったので強く叱ることが出来ずにいる。
「善処すると言ったそばから……今回の件は柱である俺に責任がある。君が責任を感じることは何もないんだ……体温が下がっている!」
杏寿郎は更紗の体温の保護をするために自身の羽織と隊服の上着を脱いで巻き付け、その体に熱を与えるように抱きすくめるが、こんな事は気休めにしかならない。