第12章 夢と現実 弐
「はぁ。自分の体のことなのだ、もっと関心を持ちなさい……君の願い通り俺たちが傷を治してもらったら、本当にこの腕を離しても飛び出さんのか?」
体の力を抜いているとはいえ更紗の表情には辛酸や後悔などが浮かんでおり、きちんと言質を取ってから答えなければ猗窩座を追いかけかねない。
そう判断して杏寿郎は更紗の色の薄まった瞳を見つめ、答えを待った。
「体のことに関しては善処します……治させていただければ飛び出さないと約束します」
瞳は変に動かず杏寿郎を真っ直ぐ見つめ返している。
嘘はついていないが表情と言葉が合っていない。
だがこれ以上問い詰めたとしても不安定な更紗を更に不安定にさせると考え、杏寿郎は首を縦に振った。
「分かった。竈門少年、こちらへおいで。君から治して……」
「お2人ともそのままで大丈夫ですよ。一度に治しますので」
更紗は冷や汗をかきはじめた杏寿郎に制止させられる前に、手に握ったままだった日輪刀の折れた刃で反対の腕を隊服ごと切り裂き、力を解放した。
「君は何を考えている?!そこまでする必要はない!竈門少年も俺も血を使って治すには危険すぎる!」