第12章 夢と現実 弐
「本当にもういいんだ……君も竈門少年も重傷を負っている。このまま無理を続けると命に関わるぞ。落ち着きなさい」
「更紗……左肩と肋骨、折れてたよな?これ以上動くと内臓に傷がついてしまうよ」
2人の言葉に更紗は我に返ったのか力を抜いて杏寿郎の胸に体を預けるが、それで終わるはずがない。
「申し訳ございません……私よりお2人の方が重傷なのに手間を掛けさせてしまって。杏寿郎君、せめて杏寿郎君と炭治郎さんの傷を私に治させてください。そうすれば、もう暴れもしませんし叫びません」
ようやくこちらに向けた顔を見て杏寿郎は更紗の願いに答えることを忘れるほど驚愕した。
「その前に更紗の瞳の色、薄くなっているぞ!何が起こっている?痛みは?!体に異常は?!」
願いに対して全く違う質問で返され僅かに眉を下げたものの、それに答えながらめげずに更紗も改めて願った。
「痛みも異常もありませんよ。はっきりとは分かりませんが、たぶん一気に体の中に力を巡らせたからではないでしょうか?私の目は力を使って色が変わりましたし……黒く戻らない限り大丈夫かと思いますのでご安心を。それで、お2人の傷を治させてもらいたいのですが」
自分のことになるとどうもあっけらかんとする更紗に、杏寿郎から思わず小さくため息が漏れた。