第12章 夢と現実 弐
もうあと数十秒で朝日が昇る。
そうすれば例え頸を斬れずとも鬼は消滅する。
だが先に限界を迎えたのは2人ではなく猗窩座でもなく…… 更紗の日輪刀だった。
地面へ向けられた力、猗窩座が逃れようとする力に更紗の日輪刀の刃が負け、真ん中付近から真っ二つに折れた。
それを猗窩座が見逃すはずもなく、愕然とする更紗を後目に右腕を切り離し、左腕は自らの首付近まで近付け杏寿郎の日輪刀の刃で切り落として後ろへと跳躍した。
そうして折れた日輪刀を握りしめ猗窩座を見つめる更紗の懐へ入り、再生した腕で抱え上げてそのまま線路脇まで全ての力を込めて投げ捨てた。
「俺を追えばあの女は死ぬぞ!」
「貴様!くそっ!」
猗窩座が日の当たらぬ場所へ走り去るのを確認する前に杏寿郎はその場に日輪刀を捨て置き、更紗へ駆け寄って未だに日輪刀を手放していない腕を引いて抱きとめ地面を滑った。
「大丈夫か?……すまない、更紗を危険な目に合わせてしまった」
胸におさまっている更紗は目に涙を浮かべながらも、まだ戦闘によって引き起こされた興奮状態が続いているようで、そこから這い出そうともがいている。