第12章 夢と現実 弐
随分離れて闘っていたはずなのに皆が待機している所まで飛んできてしまったようだ。
杏寿郎とは離されてしまったが、それでもこうして支えてくれ励ましてくれる存在に更紗は嬉しくなった。
「ありがとうございます。私も師範も死にませんし、こうして乗客の方々を守ってくださっているから、私たちは安心して闘えているのです。また戦場に戻れます」
そう言って更紗は最低限の治癒を体内のみで完結させ、2人の腕から離れた。
「そんな怪我で闘ったら無事じゃすまないぞ!」
炭治郎が腕を掴んで引き止めてきたその手に更紗はそっと自分の手を重ね合わせて腕から離す。
「それでも私が闘い続けなければ、この場の全員が無事では済まなくなるのです。皆さん、ここの方々をお任せしますね」
今度は腕を掴まれる前に、杏寿郎と猗窩座が戦闘を繰り広げている場所へと足を動かした。
そこでは2人が放つ技がぶつかり合い激しい閃光が立ち上っているため姿をはっきりとは確認出来ないが、杏寿郎が猗窩座の頸に刃を捕らえたように見えた。
それに喜びを感じたのも束の間、杏寿郎の眼前に猗窩座の渾身の拳が迫っていくのも更紗の目に飛び込んできた。
更紗は未だに続いている高い身体能力を全力で使い、2人の間へ滑りこもうと速度を上げ名前を呼んだ。
「杏寿郎君!」