第12章 夢と現実 弐
吹き飛ばされる最中、更紗の瞳には眩しいほどの炎の軌道を残しながら猗窩座へとブレることなく、一直線に向かって行く杏寿郎の姿が映った。
それ以降は明るくなりつつある空しか見えなかったが、轟音が響いてきたので無事に杏寿郎の刃は猗窩座へと届いたのだろう。
そう安心して更紗は体を捻り着地の準備に入った。
だが自分で招いた結果とは言え、余りの勢いに受け身を取ったとしても無事では済まないと直感した。
まだ体温や心拍数は上昇したままで、いつもより遥かに体は動くが背中に羽根が生えない限り怪我は免れないだろう。
「せめて足と右腕だけは守らなくては」
その言葉通り、更紗は左肩から地面に落下し地面を転がる。
そうしてすぐに立ち上がって損傷箇所を確認しようとした瞬間、左肩や左の肋骨に激しい痛みが走りよろけて地面に膝を着きそうになった。
しかしそうはならず、誰かが両肩を支えてくれた。
「更紗!大丈夫か?!こんなに傷だらけになって……何も出来なくてすまない……」
「おい、ヒョロがり!死ぬんじゃねぇ!お前が死んだら俺と闘えねぇだろ!」
左肩は炭治郎が、右肩は伊之助が咄嗟に支えてくれていた。