第12章 夢と現実 弐
何か策を練って走り寄ってくる2人に対し猗窩座は笑みを更に深くして迎え撃つ態勢を整え、跳躍し頭上から斬りかかって来た更紗の攻撃を拳で受け止めて鍔迫り合いにもっていった。
「更紗とか言ったな!杏寿郎には劣るが貴様も悪くない!こんなぬるい攻撃ではなく、せめてあれくらいのものを出せ!」
猗窩座の挑発に更紗が穏やかに微笑み要望に応えようとその場から飛びのこうとした瞬間、猗窩座の瞳が僅かに悲し気に揺れた。
「え……?」
それは瞬き1つで消え去ったので更紗は見間違いかとも思ったが妙に印象深く頭にこびりついて離れない。
しかし目の前の鬼は罪なき多くの人々を喰らい多くの罪を背負った鬼だ。
刃に迷いがあってはいけない。
更紗は頭にこびりついた猗窩座の瞳を記憶の奥底にしまい込み、再び全身に全てを瞬時に巡らせ体温を急激に上昇させる。
そして柄を握る手に力を込め全力で猗窩座に立ち向かった。
「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり」
更紗の今持ち得る全ての力を出した技からはそれに見合った量の橙と紫の炎が噴き出し、猗窩座の視界を奪うほど激しく燃え広がった。