第12章 夢と現実 弐
「動けます。闘い続けます」
その返事を待っていたかのように未だに舞い上がる砂埃から、ゆらりと人影が映し出された。
猗窩座は猛攻を受けたものの頸は守りきったようだ。
更紗はその姿を目に映すと未だに違和感の残る目を擦り、前を見据えて杏寿郎の隣りに並ぶ。
すると杏寿郎が声を最小限に抑えながら問いてきた。
「君は猗窩座から直接攻撃を受けたか?」
「いえ……あ、私が初めから感じてた違和感はそれです。私の手首を掴む力がとても優しかったと言いますか、害意がなかったのです。先ほどの攻撃に対しても防御のみでしたし……それが思い違いでないなら私に案があります」
杏寿郎は案があると言う更紗の話しを聞くも正気なのかと耳を疑った。
「それは危険すぎるだろう!何を考えている?!」
そうしている間に猗窩座が歓喜の笑みをたたえながら、砂埃から完全に姿を現した。
「危険は承知です。では、行ってまいります!」
頬に血の跡を残した少女は杏寿郎の許可がおりないだろうと予測し、却下される前に飛び出して行った。
「人の気も知らんで……世話のかかる!」
そしてその少女の後を、杏寿郎は苦虫を噛み潰したような表情で追い掛けた。