第12章 夢と現実 弐
更紗は痛みに目を細めながらも途中で技を止めることはせず刀の勢いが衰えるまで斬り続けた後、技の威力に驚き目を見開いている杏寿郎の元まで戻った。
杏寿郎は猗窩座の動向を伺いつつ、不自然に背を向けている更紗の二の腕を掴んで自分へと向き直らせた。
更紗自身、目に何かしらの異常が生じたことは理解しているので杏寿郎に見られまいと背を向けていただけで、何が自分の身に起こっているのか杏寿郎の言葉で初めて認識する。
「全てに対して何が起こっている?!目から血が流れているぞ!」
杏寿郎は自身の隊服の袖で頬に流れている血を拭ってやり更紗を背後に庇った。
「目から血が……それで目が痛かったのですね。私にもよく分からないのですが、師範としのぶさんの言葉を参考に酸素と血液と力を全身に一気に巡らせたのです。すると体温が急激に上がり、気付けばこんな事になっていました……それよりも猗窩座はどうなりましたか?」
「猗窩座に動きはない。倒せているといいのだが……そう上手くはいかないようだな。君に起こった異変に関してはこの件が片付いてから聞く。体温が上昇しているとの事だが、動けそうか?」