第12章 夢と現実 弐
一方後ろに下がった更紗は善逸の真似事で傷んだ足を治し、杏寿郎に言われたことを頭の中で整理していた。
(体内に蓄積している力は外傷を治すだけのものじゃない……それに血液を媒介とした治癒は、輸血と同義だとしのぶさんが言ってましたよね。という事は……力そのものは血液中を流れてる?それならば)
逡巡を終わらせた頃、杏寿郎は炎虎を放つ構えを取っていた。
更紗は落ち着いて深く空気を吸い込み、肺へと酸素を大量に送り出す作業を数回繰り返して心臓の動きを速める。
そうして血の巡りを最大限に良くさせ、その血液中に流れているであろう力を高速で全身へと行き渡らせた。
「体が……熱い。でもこれなら」
杏寿郎が技を振り切った後、更紗は熱を持った体で吹き飛ばされる猗窩座を追い、その足が地面についた瞬間に猗窩座の胸元に突きを入れた。
「紫炎の呼吸 弐ノ型 星炎燎原」
胸元に刺した日輪刀をその体全体に斬撃が及ぶように滑らせると、今までどの技でも出したことがないほどの炎が猗窩座を覆っていった。
それに伴い心臓の動きは速くなり上がっていた体温が更に高くなっていったが、その影響か突如視界が赤く染まる。
頬には涙ではない赤い液体が目から流れ出ていた。