第12章 夢と現実 弐
「ぐっ……!」
日輪刀で防いだものの、衝撃が強いらしく杏寿郎の体は僅かに後ろへ押された。
その様子を見た更紗は治癒を放り出し杏寿郎の前へ滑り込んで攻防一体の炎の呼吸、盛炎のうねりを繰り出して猗窩座から放たれる衝撃をいなす。
しかしさすがは上弦ノ参。
初めの数発を辛うじて防ぐもこれ以上通用しない。
「助かった!更紗は下がって足の治癒をしてくれ」
「はい、すぐに終わらせます」
猗窩座の攻撃が更紗に当たる寸前で杏寿郎が前へ飛び出し、同じく盛炎のうねりで全ての打撃を弾き飛ばして更紗が足を回復する時間を稼いだ。
そしてようやく見えない打撃が終わり猗窩座が地面へ戻ってくると、その体が動き出す前に杏寿郎が詰め寄る。
「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天!」
猗窩座の体が僅かに跳ねあがったところへ容赦なく次の攻撃を叩きこむ。
「炎の呼吸 伍ノ型 炎虎ぉ!」
更紗が苦手とするその技は、杏寿郎から繰り出されるとまるで本物の虎が激しい炎を纏いながら突進していくようだった。
とてつもない威力のその技は猗窩座の体を遠くへ押し流していったが、頸を斬り落とすには至らなかった。