第12章 夢と現実 弐
日々頼もしく成長する継子へ笑顔を向けた一瞬後、杏寿郎の姿は更紗の隣りにはなく、すでに猗窩座と激しい攻防を繰り広げていた。
正直今の更紗には先にも炭治郎と話していた通り動きを追うだけで精一杯だ。
だからと言ってここで仕方がないからと諦めては多くの命が犠牲となってしまう。
(呼吸に集中……今は速い動きが求められてるので、善逸さんの動きを参考に足へ血液を!)
更紗は肺一杯に空気を吸い込み右足へ血液を一気に流して地面を蹴る。
すると景色がいつの間にか変わっており目の前には猗窩座の背中があった。
戸惑いつつも、この好機を逃すまいと刃を振るう。
「紫炎の呼吸 壱ノ型 紫炎のーーっ?!猫」
足を踏み出した瞬間、先ほど地面を蹴った右足に激しい痛みが走り刃先がぶれ、しゃがみ込んで更紗の攻撃を躱した猗窩座の髪先を僅かに切っただけだった。
「なんだ今の動きは!面白い、お前も悪くないぞ!」
そう言って足の治癒を行う更紗に笑顔を向けると、しゃがんだ足をバネにして空中へと飛び上がり何かの構えを取る。
「破壊殺・空式」
猗窩座の視線は更紗へと向いていたが、放たれた何かが向かったのは杏寿郎の方だった。