第12章 夢と現実 弐
「本当に……私が逃げ出さず闘い続ければ、あちらの方々を殺さないですか?私が例え師範の足手まといになったとしてもですか?」
更紗の問いに猗窩座は考える素振りもなく、さも当たり前の事を言うように言い放った。
「殺さないと約束はするが、足手まといになるな」
残酷な言葉に更紗は奥歯を嚙み締めた。
だが鬼狩りを続けていれば遅かれ早かれこういった事態は来てもおかしくなはい。
目の前に適うはずのない強敵がいても闘わなくてはならないのだ。
「更紗、君はその気になれば無尽蔵に動ける。呼吸を意識し自己修復能力をうまく使え。体内に蓄積されている力は何も外傷を治すだけのものではないはずだ。俺は全力で上弦に向かうので……援護を頼んだぞ」
以前にも杏寿郎に言われた事だ。
呼吸を駆使すれば自己修復能力も相俟って無尽蔵に動ける体だと。
今まで意識したことがなかったが今言われた事を実際に出来れば、足手まといから少しでも脱却するかもしれない。
更紗はそう思いなおし気持ちを引き締めて頷いた。
「やってみます。どうか私のことは気にせず全力をお出しください。師範の援護、精一杯務めさせていただきます」