第12章 夢と現実 弐
「理解出来ない。特に女、弱い奴が選択肢を与えられると思っているのか?常に弱者は強者に従うしか道はない。現に杏寿郎がいなければ貴様は」
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火」
猗窩座の言葉は聞くに耐えないと言わんばかりに杏寿郎は一瞬で距離を詰めて頸を狙うも、急な攻撃にも関わらず躱され頬を掠るに終わる。
「もう一度言うがこの少女は弱くない。力の強さだけが強さを表す指針とはなり得ない。何を言われようとも、俺も更紗も絶対に鬼にはならない」
「……鬼にならないなら杏寿郎は殺す!破壊殺・羅針」
猗窩座が構えを取って足を踏みしめると、地面に雪の結晶を模した羅針盤のような紋様が浮かび上がった。
それと同時に杏寿郎へと凄まじい速度で迫り寄り、猛烈な速度と威力の拳を繰り出している。
それを的確に捉え受ける杏寿郎の力量は相当なもので、もはや待機命令を出されている者たちには立ち入る隙はない。
「更紗、君ほどの力があっても援護出来ないのか?」
炭治郎は呼吸で止血を試みている状況なので、もちろん援護なんて到底出来ない。
それは目立った怪我のない伊之助や善逸、禰豆子、そして継子である更紗とて例外なく援護に入れない。