第11章 夢と現実 壱
飛ばされている最中、ゆっくりとした世界で機関室から飛ばされる炭治郎が目に入った。
その腕の中には更紗が任せた運転手がいたが、炭治郎の脇腹には列車の窓の物と思われる破片が突き刺さり、酷く出血しているのが分かった。
治癒するにも自分が上手く着地しなければ、誰の事も助けられない。
更紗は最後の力を振り絞って受け身を取り技で自身の体への衝撃を抑えようと試みるも、一度技の発動を止めた腕にそんな力は残っていなかった。
「軽い怪我で済むといいですが……」
そう呟き衝撃に備えると、強く腕を引かれ優しい衝撃が更紗を包み込んだ。
「受け身を取ったとして、あの勢いでは無事ではすまんぞ」
更紗がきつく閉じていたまぶたを開けると、呆れつつも笑顔を向けてくれる杏寿郎の顔があった。
「師範、ありがとうございます」
杏寿郎は膝の上に更紗を落ち着け大きな怪我がない事を確認して息をつく。
「無事で何よりだ、よく頑張った!俺は乗客の無事を確認しなくてはならない、ここで待てるか?」
「はい。私は大丈夫ですので、乗客の方をお願いします……それと、炭治郎さんが怪我を負っていたので、私が動けるようになるまで応急処置をしていただけませんか?師範にお願いするのは、失礼かもしれませんが」