第11章 夢と現実 壱
「はい!お任せください!」
そうは言ったものの技をいつまでとも分からない時間放ち続けることは、想像を絶する辛さだった。
揺れのない地面で技の発動をするならまだしも足場の不安定な場所での発動は無駄に体力を消耗し、徐々に日輪刀を握る手の力が頼りなくなっていく。
だが日輪刀を手放すわけにはいかない。
手放してしまえば杏寿郎への負担が増えてしまう。
足を引っ張る事だけは更紗は絶対にしたくなかった。
右手だけで日輪刀を握り、左手で髪紐を解いてそれを右手に巻き付け日輪刀と手を固定する。
「あぁーーーーー!!炎の呼吸 参ノ型 気炎万象!」
車体が傾きその側面に体を移動させて地面に技を繰り出し、その衝撃で車体を浮かせるを繰り返す。
もう間もなく車体が地面へと到達し、更紗に課せられた杏寿郎の指示を完遂できる。
「更紗、踏ん張れ!あと少しだ!」
更紗は限界が近いというのに、杏寿郎は現状を把握し継子を励ますほどの余力があるようだ。
そんなとてつもない体力と力量がある師範の声に、思わず更紗の顔に笑みが浮かんだ。
「師範に負けてはいられません!」
「うむ!その意気だ!」
そうして車体は最低限の衝撃だけを受け横倒しとなり、やがてその動きを止めた。
しかしその衝撃に更紗の体は耐えきれず、遥か向こうへと飛ばされていった。