第11章 夢と現実 壱
更紗もそれを理解した上でしっかりと頷き、手に持ったままの日輪刀を鞘に戻した。
「はい!行ってまいります」
「あぁ、期待している!」
杏寿郎の力強い言葉に更紗は嬉しそうにフワリと微笑んで、車輌の屋根へ向かうために乗降口に足を動かした。
高速で移動を続ける歪な列車は強風で体を煽るが、更紗はまるで何も抵抗がないかのようにヒョイと屋根へと体を移動させた。
立ち上がり前方を確認すると、先ほど更紗を苦しめていた大量の目がこちらへ出現していた。
2人の姿は更紗の位置からは確認出来ないが、声や何かを切り裂く音が目のある場所から響いてくるので、そちらにいるのだろう。
つまり、そこに鬼の急所がある可能性が高い。
「あの目をどうにかすれば、お2人が闘いやすくなるはず」
そういうが早いか、更紗は日輪刀を抜き出して屋根を踏みしめる足に力を入れる。
そうしてその力を一気に解放し、勢いよく一直線に大量の目へと体を移動させ技の発動に移った。
「炎の呼吸 参ノ型 気炎万象」
ほぼ体当たりに近い状態で突っ込み、滑らかな曲線を描きながら上から順番に目を抉り潰し、機関室の床へと着地した。