第11章 夢と現実 壱
「闘えます。それに禰豆子さんに一緒に頑張ろうと励ましてもらったので、このまま倒れる訳にはいきません」
更紗のその言葉で杏寿郎の禰豆子への認識が変わった。
今まで鬼だからと警戒していたが、身を呈して人々を守り仲間を励まし鼓舞する禰豆子の行動は、すでに立派な鬼殺隊士であると。
「そうか、仲間に励まされては歯を食いしばってでも闘わねばならないな」
禰豆子を仲間だと認めた杏寿郎の言葉に更紗は胸の中が熱くなり、なんとも言えない高揚感が生まれた。
だがそんな高揚感も辺りの不気味な程の静けさがどんどんと払拭していく。
それは杏寿郎も感じていたようで表情を険しくした。
「静かすぎるな。後方車輌も更紗が紫炎を出した後から全く動きがない……竈門少年達が鬼の急所を見つけたのかもしれんな。更紗、君が行って確かめるのだ。必要であれば加勢をしてこい。今の状態ならば車内は3人で事足りる」
杏寿郎は車内から離れられない。
また肉塊が動き始めた時、5両もの車輌の乗客を守れる力を持つのは杏寿郎しかいないからだ。
そして禰豆子は鬼で日輪刀を持っていないため下弦ノ壱の頸を前にしてもとどめを刺せない。
その点では問題はない善逸は何分眠っているし階級的には更紗の方が上なので、経験や力量を考えると杏寿郎の判断は正しい。