第11章 夢と現実 壱
紫の炎は初めの一点を起点とし、更紗が日輪刀を広範囲に振るう事によって、一気に燃え広がるようにして車輌内を埋め尽くした。
広範囲に及ぶ技なので乗客を避ける事には苦労したが、その苦労の甲斐があり大量の目と肉塊は一掃された。
だが慣れない技に更紗の体力は削られ、額には汗が流れ息が上がっている。
それを見ていたのか、心配そうに更紗へ視線を送っている禰豆子へ、笑顔を向けて安心させる。
「大丈夫です!少し疲れただけで、まだまだ闘えますよ」
「ん!んむーー!」
言葉は分からないが胸の前で両の手で拳を握りしめて頷いているので、『もう少し、一緒に頑張ろう』と励ましてくれているのかもしれない。
そして禰豆子に続いてもう1人、激しい紫の炎と爆音に引き寄せられ杏寿郎が姿を現した。
「更紗!よもや紫炎の呼吸を使った……ようだな。君が必要だと感じて使ったのならば責めるまい……が、その髪は……いや、それは後でいい。まだ闘えるのか?」
杏寿郎はやはり更紗の髪が元に戻っている事に驚きつつも、今優先することは乗客の保護と鬼の討伐なので急務ではない髪は後にまわすことにしたようだ。