第11章 夢と現実 壱
こんな1両の広さに群がる目や肉塊など、杏寿郎ならば瞬時に切り刻むだろうが、更紗にはそれほどの技量も力も持ち合わせていない。
炎の呼吸を玖ノ型以外全て使えるとは言え、威力も速度も杏寿郎の足元にも及ばないのが現状だ。
(このままでは消耗戦で私が不利になる一方です……一か八か試してみましょうか)
こうして更紗が攻めあぐねていても鬼の攻撃は一向に緩んではくれず、なんならどんどんと攻撃の速度は増し一撃も重くなっている。
呼吸の技、杏寿郎に教えてもらった剣術を駆使して斬り伏せ続けても数が多く休む隙もありはしない。
「いい加減にしてください!自分の急所も見せず卑怯極まりないです!」
いつまでも続く執拗な攻撃に更紗もついに痺れを切らし一度目の前の全ての肉塊を一掃して、炎の呼吸には存在しない構えを取った。
前後に足を開き、右手で日輪刀を握りしめ、左手を峰に当てがって前を見据える……のが正しいのだが、今は大量の目が更紗を捕らえようとしているので床へと視線を落とす。
「紫炎の呼吸 弐ノ型 星炎燎原」
更紗が自身で生みだした炎の呼吸の派生、紫炎の呼吸の1つを繰り出した。
それは対象に突きを見舞い、その穴を中心として辺りを斬り伏せる技だ。