第11章 夢と現実 壱
「なんだ、その身の毛もよだつ気味の悪い状況は!それで、それは更紗1人で対処可能なのか?」
「もちろんです!師範のご心配には及びません。ここで目を引き付け、前の2両と車輌の屋根へ移動した炭治郎さんたちが闘いに集中できるように致します。前の2両に関しては、禰豆子さんと善逸さんが懸命に人々を守り、現在は善逸さんが細かく切り刻んでくださいましたので、そちらも当面は心配ありません」
杏寿郎は更紗の正確な現状報告に満足げに頷くと、頭をクシャリと撫でてやった。
「君の状況判断能力も向上しているな!喜ばしい事だ!ではここは君に任せて俺は後ろに戻る。油断せず事に当たれ、そして対処に限界を感じたならばすぐに俺を呼びなさい」
「はい、師範もお気をつけて」
その言葉に杏寿郎は笑顔を残して、物凄い速度で持ち場へと戻って行った。
更紗はその後ろ姿を見送り、持ち場である車輌に向き直って成長を喜んでくれた師範の手のぬくもりの残る頭に、ほんの少し喜び興奮しながら触れる。
すると鬼に髪を引っ張られた影響で頭皮に傷があったのか、フワフワと銀色の粒子が手から溢れ頭全体を覆っていく。
だが実際は頭皮に傷などなく、力そのものに意思があるかのような働きをした。