第11章 夢と現実 壱
大技を出した後なのに、やはり眠り続けている。
さすがの禰豆子もキョトンと善逸を見つめ、呆然としていた。
そんな2人を思わず笑顔で眺めた後、更紗は身を翻してその場を離れた。
(目は私だけを追いかけてきています。それならば、もと居た場所で目の全てを引き付けなくては)
3両目に戻ると、やはり修復が追い付いていないようで肉塊が気味悪く蠢いているだけだった。
だがいずれは全て修復して、再び大量の目と太いミミズのような肉塊が襲ってくるだろう。
「考えても仕方ありません……こまめに修復の阻害をして炭治郎さんたちが鬼を倒してくださるまで時間を」
更紗の独り言は一際大きな揺れで中断させられ、尻もちをついてしまった。
「更紗、何か変わったことは起きていないか?後ろは細かく斬り伏せてきたので僅かだが時間を稼いだ」
どうやら大きな揺れの原因は杏寿郎の人並外れた技によるものだったようだ。
更紗が1両分を対処する事がやっとだったのに、杏寿郎はいとも簡単に5両をやってのけた。
力の差を存分に感じながら、更紗は杏寿郎が差し伸べてくれた手を握って立ち上がり質問に答える。
「目が出てきます。どうやら私を捕まえたいみたいで、眠らせては肉塊が体を絡め捕ろうとしてきます」