第11章 夢と現実 壱
そう言って項垂れる更紗の短くなった髪を梳きながら、杏寿郎は笑顔を向けた。
「そこまで情報を掴んでいるなら上出来だ!むしろ、俺がうたた寝してる間にそこまで事態が進んでいようとは……柱として不甲斐ない。穴があったら入りたいくらいだ!」
本当に穴に入りたいと思っているかはさて置き不甲斐ないと思っていることは確かなようで、僅かに眉が下がっている。
杏寿郎たちは車掌に切符を切られた影響で眠りに落ちていたらしい。
術の性質上、まず間違いなく下弦ノ壱が関与しており、更に人と手を組んでいたことになる。これではいくら鬼に警戒していようとも、防ぐことは不可能だっただろう。
「師範たちの方が防ぐことは難しかったと思います。まさか人が関わってるなんて……そして床で倒れてらっしゃるのが、その人たちということですね?……えっと、あの方もそのお1人でしょうか?」
更紗の視線の先には、瞳に涙を溜めた同じ歳の頃の少年が静かに立ち尽くしていた。
「うん、鬼にいいように利用されてたみたいなんだ。あの人は結核を患ってるようで、その苦しさから逃れるために鬼に手を貸していたんだって」
炭治郎が悲しげに少年に視線を送ると、少年は視線を逸らして俯いてしまった。