第11章 夢と現実 壱
「ふざけないで!あんな人の心を踏みにじるような夢、素敵なはずないでしょう!」
更紗は床に転がされていた日輪刀を手に取り背後にいる鬼へと刃を振るうも、そう上手く斬れるわけもなくただ空を斬り鬼を苛立たせるだけに終わってしまった。
「あんまり調子にのらないでよ。僕はあの方の指示で君を殺していないだけなんだから」
鬼は掴んでいる髪を上へ引っ張り、無理矢理に更紗を立たせて言葉を続ける。
「でも傷付けちゃいけないとは言われてないんだ。このまま髪を引き抜いても問題ないし、この耳を噛み切ってもお咎めはない」
耳元で囁かれた際に吐息が更紗の耳を刺激し、最悪な気分に更に拍車がかけられた。
「そうですか。耳は差し上げられませんが、そんなに髪が欲しいのなら差し上げます!」
鬼を斬る事は叶わずとも毎日結い上げている髪がどこにあるのかくらい、引っ張られている感覚から見えなくても更紗には把握出来る。
日輪刀を奪われる前に髪紐で結んである付近に刃を素早く持っていき、躊躇いなく切り落とした。
「驚いたぁ、女の子にとって髪は大切なんじゃないの?」
驚いていない嫌な笑顔を向けられたことも気にせず、またそれに答えることなく自由になった体を鬼へと向け瞬時に構えをとる。