第11章 夢と現実 壱
本日3度目となる急激な意識の覚醒に辟易しながら、更紗はゆっくりとまぶたを開ける。
視界に映る天井は列車のもので胸を撫で下ろしたのも束の間……すぐに息を呑むこととなった。
「あれぇ?起きちゃった。あのまま夢の世界にいれば鬼狩りなんて無縁で居られたのに……ひとまず、おはよう」
上から覗き込んできたのは、更紗が探していた洋装姿の鬼だった。
どうやらこの鬼に膝枕をされて眠っていたらしく、頭に床の硬い感触は感じない。
更紗は命があったことに安堵する間もなく、不快な場所から離れようと飛び起きて距離を取ろうとするが、結い上げている髪を捕まれそれは叶わなかった。
「痛っ……目覚めて初めに見た顔が貴方なんて最悪の気分です!人の心を弄んで楽しかったですか?!下弦ノ壱!」
更紗が探していた鬼は十二鬼月の1人、下弦ノ壱だった。
初めに遭遇した時は距離があり確認出来なかったが、覗き込んできた時にしっかりと更紗の目に映った。
左の瞳に刻まれた『下壱』という文字が。
「僕は君の寝顔が見れて嬉しかったけどねぇ……それに心を弄ぶなんて心外だなぁ。いい夢だったでしょ?死んだ人にもう一度会えるなんて素敵じゃないか」