第11章 夢と現実 壱
悲しい言葉が更紗をここにとどまらせようと、容赦なく降り注がれる。
共には生きられない。
すでに死んでしまってる人と過ごすことは出来ない。
この世界と共に男性の存在を壊して……元の世界に戻らなくてはいけない。
更紗の心はぐちゃぐちゃに掻き乱され、涙がとめどなく流れ落ちる。
「私に……2度もこの人を殺せと言うのですか?そんな事……」
再び意識が持っていかれそうになった時、背中に温かさが広がった。
『しなくちゃ駄目だよ。更紗ちゃんは約束したでしょ?生きて生きて笑うんだって。誰と笑って生きるか思い出して。腰の日輪刀で貴女の世界に戻って……』
「棗姉ちゃん?」
男性の胸から離れ後ろを振り返るが、誰もいない。
この場にいるのは更紗と、更紗を不思議そうに見つめる男性だけだった。
(棗姉ちゃん……私がこんなだから安心して天国にいけないんだよね……)
更紗の胸はまだ様々な感情で入り乱れているものの、もう一度聞きたいと願っていた棗の声に落ち着きを取り戻す。
そして男性へと向き直って頭を下げた。
「貴方がいてくださったから、今の私があります。本当に感謝しかございません……ですが、やっぱり共には行けません」