第11章 夢と現実 壱
更紗は1度日輪刀を鞘へと戻し、ずっと笑いかけてくれていた男性へと笑顔を向ける。
「いえ、怪我は痛みませんので大丈夫です。皆さんが帰ってこられないのであれば、ここでお茶にしませんか?私、お日様の温かさが大好きなので」
そう言って、鬼の血鬼術で作り出されたとは思えないほど綺麗に晴れ渡った空を見上げる。
空に浮かんでいる太陽はどこまでも温かく、更紗が愛してやまない人を連想させた。
(杏寿郎君、皆さん……どうかご無事で。私は必ずここから抜け出して、皆さんの元にもどります)
決意を新たに視線を男性に戻すと、驚いたように更紗を見つめる男性と目が合った。
「いつの間にそんな表情豊かになったんだ?……いや、ごめん。じゃあ台所へ向かおう」
更紗の手首を掴む手には体温が感じられ、懐かしさで胸がいっぱいになると同時に意識を奪われそうになった。
男性に連れられ台所へ足を動かしつつ、首を左右に振って意識を保たせる。
(少しでもこの場所が心地いいと思えば、夢に引きずり込まれる……?本当に悪趣味でタチの悪い血鬼術。人の記憶を弄ぶなんて正気の沙汰とは思えません)