第11章 夢と現実 壱
(なんて悪趣味な……この方の生きてる姿を見せれば喜ぶとでも思ったのでしょうか。これだから鬼は……)
と鬼に悪態をつきそうになった更紗の脳裏に同じ鬼である禰豆子の姿が浮かんだ。
鬼の概念を覆す強靭な精神力をもつ禰豆子は、まるで人間の幼子のように泣き人に甘え、体を擦り寄せてきてはその温かさに頬を緩ませ微睡みに落ちる。
裁判の時に兄である炭治郎から聞いた話によると炭治郎と共に鬼と闘い人を助けているらしい。
「鬼が禰豆子さんみたいに全て優しければ、こんな悲しみや辛さを誰も感じずにすむのに」
小さな呟きは男性にも所々届いていたようで首を傾げている。
「鬼?……辛いならやっぱり手当てをしよう。大丈夫、今日は家の中に誰もいないから」
更紗に優しく微笑みかける男性は、本当に生きているかのようで涙が込み上げてくる。
だが更紗が刃を向けているのに、それが目に入っていない様子で話す姿はやはり本物ではないと認識させられる。
しかし今はこの場から抜け出す方法が分からない。
鬼の手の平の上で踊らせれるのは癪だが探らずには前に進めないので、鬼の望み通り作り出された男性のそばにいることに決めた。