第3章 出会い
居間に入って準備していた急須に茶葉を入れていると、パタパタと杏寿郎とは違う軽い足音が近付いてきて、襖がスッと開いた。
「お、おはようございます、更紗さん!これは更紗さんが?」
卓袱台に並んだ朝餉を見て、千寿郎は嬉しそうな申し訳ないと言うような複雑な表情をしている。
「いえ、杏寿郎さんと2人で作りました。お味噌汁の具材は杏寿郎さんが切ってくれたのですよ」
そう言われて千寿郎は味噌汁を覗き込んだ。
確かに杏寿郎が切ったのだと分かる、大きな野菜がゴロゴロと沢山入っている。
まさしく男の料理と言える味噌汁だが、兄の手料理を久々に食べられる事が嬉しいのかつり目気味の目尻を下げた。
「更紗さん、ありがとうございます。いつも自分の手料理ばかりだったので、こうして兄上や更紗さんが作ってくださったものを食べられるのが嬉しいです」
本当に嬉しいのだろう、ニコニコと笑う千寿郎はそそくさと上座の席を杏寿郎の為に空け、更紗の隣りに座った。
「私も誰かが作ってくださったものを、こうして食卓を囲んで食べるのが本当に久方ぶりなので、すごく嬉しいのです」
更紗のフニャッとした笑顔につられるように、千寿郎もフニャッとした笑顔になり居間はほのぼのとした空気に包まれた。