第3章 出会い
髪を結うのには杏寿郎が思わず笑いを堪えるくらい不器用な更紗だったが、料理に関しては手際よくすすめていき、杏寿郎も舌を巻くほどであった。
「凄いぞ更紗!君は器用だったのだな!俺はあまり役に立たなかったぞ!」
よほどサツマイモの味噌汁が楽しみなのか、沸騰して台無しにならないように頻繁に火の強さを確かめながら、ずっとそれをお玉で混ぜ続けている。
「器用ではありませんよ、毎日言われた物を失敗しないように作っていたら出来るようになっていただけです。杏寿郎さんの日々の鍛錬と少し似ていますね」
フフっと笑って、香の物、焼き魚、切り干し大根、ご飯を次々と器によそっていく。
サツマイモの味噌汁に関しては杏寿郎の担当のようなので、それをよそっているのは杏寿郎である。
1人分は箱膳へ乗せ、他は居間へ運んでいく。
「これを父上に届けてくる!こんなに美味そうなのだ、父上も完食して下さるだろう!」
杏寿郎は足取り軽く運んでいくが、味噌汁がそれに合わせて左右にタプタプと揺れている。
絶妙なバランスを保って揺れるだけで済んでいるところを見ると、流石は柱といったところか。
炎柱のご機嫌な後ろ姿を見送ると、更紗は割烹着と三角巾を外して居間で杏寿郎と千寿郎を待つ事にした。