第11章 夢と現実 壱
意識が途切れそうになったが、再び急激に覚醒する。
先程と同じく軽く目眩を覚えながら更紗は皆の様子を確認するために閉じていたまぶたを開くと、そこは今までいたはずの列車の中ではなかった。
思い出すだけで胸の内が抉られるような痛みを伴う場所、あの屋敷の縁側に立っている。
「幻覚?夢?あの鬼の血鬼術でしょうか?……日輪刀も隊服もそのまま。そう言えば1度目に意識が途切れる前、鬼は私に眠れと言っていました。つまりここは夢の中?時間差で?」
1人悶々と考えていると背後から何かが近付いてくる気配を感じ、腰におさめられてある日輪刀を鞘から抜いて勢いよく後ろを振り返った。
「どうかしたか?傷が痛むなら手当てをするから、こっちへ来てくれ」
「え……?どうして貴方が……」
振り返った更紗の目の前に立っていたのはあの屋敷で唯一、自分を人間として扱ってくれていた男性だった。
「どうしてって言われてもなぁ。こんな家だけど、ここは俺の家だし」
困ったような笑顔も更紗の記憶にある男性そのものだ。
生きている姿を見て、懺悔や後悔、助ける力のなかった当時の自分に苛立ちを覚え体が震える。