第11章 夢と現実 壱
「喜ばしいお話しを遮ってしまい申し訳ございません……ですが、あの鬼とは別の鬼を見たもので……後ろの車輌にいませんでしたか?真っ白な肌に顎で切り揃えられた黒髪、洋装姿の鬼なのですが」
「いや、後方車両にそのような鬼の姿はなかった。だとすると血鬼術で姿を隠したか、どこかへ移動したか……」
杏寿郎の言葉に更紗は一気に血の気が引いていった。
「そんな……私と同じくらいの年の人達が4人、鬼と一緒に姿を消したんです!もし鬼に喰われてしまっていたら……私は」
ガタガタと身体を震わせる更紗の肩を抱き、杏寿郎は安心させるように背中をさすってやる。
「攫われたかもしれんが、まだ喰われたとは限らない。それに竈門少年は鼻が効くらしいが、血の匂いがするなど一言も言っていないので助けられる可能性は高い。こちらにはこれだけの数の剣士がいる、探すぞ」
「はい!皆さん、ご協力よろしくお願いします」
そうして杏寿郎が更紗に向けて笑顔を放ち、指示を出し始めたところで再び更紗の意識が曖昧となっていく。
それは更紗だけでなく、その場にいる全員が同じ感覚に陥っていた。