第11章 夢と現実 壱
「あんな細っこい奴に鬼が倒せんのかよ?!」
そう叫ぶ伊之助はもちろん善逸も最終選別で更紗と共に鬼と闘った炭治郎でさえも、杏寿郎の継子となってからの厳しい鍛錬や甘えなど微塵も許されない鬼退治をさせられていた更紗の今の実力は知らない。
「大丈夫です!」
更紗は杏寿郎が取り残されていた人を抱え上げたと同時に、異形の鬼へと一瞬で間合いを詰め技の構えをとる。
「炎の呼吸 参ノ型 気炎万象」
不安げに見守る3人の目に映ったのは細くしなやかな腕から繰り出される、辺りを静まり返させるような滑らかな曲線を描く凛とした炎の呼吸の技。
つい先程、炭治郎たちは杏寿郎の激しく燃え盛るような技を見た。それは一撃で鬼の頸を斬り落とすほどの威力で、思わず見入ってしまう力強さと美しさだった。
威力や精度は断然柱である杏寿郎に軍杯が上がるが、更紗の細腕から繰り出されたとは思えないほどの威力の技は目を見張るものがある。
それに僅かであるが更紗の炎の残影には紫の炎がチラチラと舞い、同じ炎の呼吸にも関わらず2人のそれは別のもののように映った。
そんな3人の視線を気にもとめず更紗は先の技で体勢を崩した異形の鬼から距離を取らないまま、杏寿郎に叩き込まれた技を発動させてとどめを刺す。
「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」