第11章 夢と現実 壱
先頭車両を見据え、背に隠していた日輪刀を腰へと移動させて1つ目の妻引戸を開いて深呼吸をする。
左手で鞘を握り鍔をすぐに弾けるよう親指を軽く当て、一気に最後の扉を開く。
するとそこには椅子に腰掛ける人の姿はなく、その代わりに床へ座り込む4人の少年少女とこちらに背を向けて立つ洋装姿の男の姿があった。
その男があまりにも現実離れした格好をしていたので、すかさず鞘から日輪刀を抜き出し刃を向ける。
「そこで……何をしているのですか?乗客の方とは思えませんけれど」
更紗の声に反応して洋装姿の男がゆっくり振り返る。
男の肌は人ではありえないほど白く、また血管が浮き出ていた。
「鬼?……その人たちを解放してください!」
「あれぇ?どうしてここに鬼狩りがいるのかなぁ?あの車掌、1人取り逃してるじゃないか」
ゆったりとした声は更紗の言葉など意に介さず、自分の思いだけをただ述べる。
「聞こえませんでしたか?その人たちを解放してくださいと言ったのです」
「聞こえてるよ?でもね、解放する必要がないんだよ。ん?君は……これはいいね!とりあえず君もお眠り」
男が左手を翳すと同時に更紗の意識はプツリと途切れた。